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【邦画】『関ケ原』感想レビュー--義を重んじる誠実な男が、狡猾な戦略家に痛めつけられ敗北する話

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監督&脚本:原田眞人/原作:司馬遼太郎
配給:東宝=アスミック・エース/公開:2017年8月26日/上映時間:149分
出演:岡田准一、有村架純、平岳大、東出昌大、北村有起哉、役所広司

 

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54点
この映画、とにかく気になるのが、たびたび登場する西暦と場所を示した字幕。「1597年。大阪、伏見城。」みたいな感じで、謎の「。」が入っている。なんなの、これ?  あと、この話は「後世の人物が関ケ原について記している」という体であり(だから字幕も西暦で表示されている)、たまに入るナレーションは、その書き手の声ということになる。だが、その誰だかわからない謎の書き手は、冒頭の子供時代のワンシーンのみで、そこから先は最後まで現れない。この人、必要?

関ヶ原〈上〉 (新潮文庫)

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時代劇の華と言えばアクションだろう。長い映画の中で、引っ張って引っ張って最初に繰り出されるアクションは、伊賀出身の忍びで石田三成(岡田准一)に拾われる初芽(有村架純)が、赤耳(中島しゅう)らと戦うシーン。ここ、具体的に何が起こっているのかよくわからない。スピード感を出したいのだろうが、人物がブレているし。さらに、原田眞人監督おなじみの無駄に多いカットのせいで、さらに見づらくなっている。

さらに初芽がやられたかのようなシーンのあとに字幕で「前田利家 死去。」と唐突に出るのも、なんなんだか。このつなぎ方だと初芽=利家みたい。歴史に詳しい人ならば「利家の死によって家康の権力が高まった」ということを知っているのだろうが、さすがにそれを一般常識とするのはどうか。そこまでに利家が家康の暴走を抑えていたという描写は少ないし、利家の死によって東軍がどう変化したかの説明もない(あったかもしれないが、わかりづらい)。

似たような件で、もう一つ。かなり意味のありそうな石田三成と直江兼続の密談のシーンを中盤に入れておいて、結局当日は兼続は来れませんでしたって、ストーリーテリングとしておかしいでしょう。そんないなくてもいい兼続役に、松山ケンイチなどという、若手では珍しくちゃんと殺陣のできる人をキャスティングしないでくれ。

えっと、諸々を総合するに、単純に映画を撮るのが下手ってことでいいのかな。このわかりづらさは、「関ケ原の戦いくらい知ってるだろ。知らなくて意味が解らないなら、そっちのせいだよ」という責任転嫁をしているだけに思えるのだが。主要キャストの名前にローマ字表記を並列しているということは、海外も視野に入れているんだろうに。

狡猾に権力を掴もうとする徳川家康(役所広司)の狸親父ぶりに対して、義を重んじる石田三成が敗北していくという話である。それは、現代の歴史好きな日本人が抱く一般的な関ケ原のイメージであり、この映画は、それを実直になぞっているだけである。なぜ2017年の今、そんなことをする必要があったのか。

世話になった豊臣家に忠義を尽くす石田三成を正義として描くのはいいが、三成は何度か家康に一矢報いるものの、基本的には常に劣勢に立たされており、そしてそのまま、たった1日の合戦で敗北する。なんのカタルシスもない。役所広司の演技も相まって、嫌な奴が天下を取ったという話だ。

全てが終わった後に徳川家が200年以上も平定の世を創り出したことを最後にナレーションで付け加えるだけでもすれば、まだすっきりしたかもしれない(まあ、江戸時代初期が繁栄したのは、家康じゃなくて秀忠、家光の功績なんだけど)。家康が勝ったこと(もしくは三成が負けたこと)に劇中で意味を見出さなくては、作劇としては失敗であろう。

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