監督:パティ・ジェンキンス/脚本:アラン・ハインバーグ/原案:ザック・スナイダー他
配給:ワーナー/公開:2017年8月25日/上映時間:141分
出演:ガル・ガドット、クリス・パイン、ロビン・ライト、ダニー・ヒューストン
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55点
海外には一度も行ったことが無いし、日本のものに比べれば海外の映画や小説に触れている機会も圧倒的に少ない。海外で生まれ育った知人もほとんどいない。だから国民性の違いとかなんとか全く分からないのだが、それでも気になる。本作『ワンダーウーマン』を観て、アメリカ人はダイアナに共感するのだろうか?
時は第一次世界大戦の真っ最中。こちらの世界とは超次元的な力で遮断された女性しかいない島で生まれ育ち、最強の戦士として訓練し続けるプリンセスことダイアナ(ガル・ガドット)。ある日、ドイツ軍に追われるイギリスのスパイ、スティーブ(クリス・パイン)が空間の狭間を破って島に流れ着く。ついでにドイツの軍艦も来て、ひとバトルあったのち、なんだかんだでダイアナは戦争を止めるべく、スティーブとともに外の世界に旅立つ。
ダイアナは幼少期から読みまくっていた古代ギリシャの本から、戦いの神であるアレスを倒せば戦争は終わり世の中は平和になると信じている。そして、毒ガス兵器をばらまこうと企むドイツのルーデンドルフ将軍(ダニー・ヒューストン)がアレスに違いないと決めつけている。一方のスティーブは、この戦争はそんな単純な構造ではないと説得するが、ダイアナは聞く耳を持たず、休戦協定の流れさえ拒絶する。
この話、定石通りならば、主人公であるダイアナの言っていることが実は正しかったんだ、というオチになる。だが、そんな善・悪の二元論を信じるには、我々は多くの争いを経験しすぎている。唯一の絶対悪が存在して、それさえ倒せば全て解決だなんて、出来の悪いおとぎ話でしかない。
ところが困ったことに、この話はルーデンドルフ将軍(ちなみに実在の人物)が、まさにこの戦争における絶対悪として描写されている。なんせ毒ガスをバラ撒きたいがために、休戦協定を結ぼうとする身内幹部ですら簡単に殺すのだから。たまたまルーデンドルフ将軍が非道に暴走したせいで、ダイアナの信念が正しかったかのようになっている。
一応ラストの何度かのどんでん返しを経て、ダイアナは自分の間違いを認め、別の(個人的には心底どうでもいい)結論を導き出すわけだが、しかしアレスが現にいたのではダイアナの信念はさほど間違っていないということになる。今のアメリカの人は「悪を倒せば戦争が終わって平和になる」というおとぎ話を本気で受け入れるのか。だとしたらヤバいぞ。そりゃトランプだって大統領になれるわけだ。
以上の話と関係があるのかないのかわからないが、ダイアナのアクションが後半に行くにつれてしょぼくなるのはいかがなものか。ヒーローものにおける強すぎる主人公が本領発揮できるのは相手が大多数の時だが、最後なんて2度も1:1で対決し、しかも前・悪の二元論をハナから信じていない我々からすれば、勝ったら何が解決するのかも不明瞭なままでアクションを見せられている。まあ、アクションが退屈なのは、単純に撮り方のせいかもしれないけど。
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