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【邦画/アニメ】『山村浩二 右目と左目でみる夢』--不思議な心地よさがあるアニメの特集上映

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監督:山村浩二
公開:2017年8月5日/上映時間:54分

 

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62点
山村浩二という名前を聞いて、どれくらいの人が「ああ、あの人ね」と解ってくれるのだろうか。「ほら、『頭山』の人」と言えば、少しは増えるだろうか。かくいうボクも、『頭山』と言われて初めて思い当たった口であり、恐縮するしかないのだが。

山村浩二監督作『頭山』は、同タイトルの古典落語の演目をアニメにしたもので、2002年にアカデミー賞短編アニメーション部門に日本人の作品としては初めてノミネートされた記念すべき作品である。ちなみに日本人初受賞となるのは2008年の『つみきのいえ』。当時はけっこう話題になってレンタルビデオ店にも並んだのだが、この作品を作った監督の名前、皆さん覚えていますか?

アカデミー賞の権威にすがるわけではないが、こういう海外で評価されたアニメ作品や監督が国内で全く浸透していない時点で、何がクールジャパンかとも思ってしまう。監督の方たちは今でも精力的に活動しているのに。いや、これはただの愚痴だけど。

さて、そんな山村浩二監督の作品が一挙に鑑賞できる特集上映が渋谷のユーロスペースで開催されていた。『山村浩二 右目と左目でみる夢』というタイトルで短編9作を上映。それぞれ異なるところから異なるコンセプトで依頼されたものを並べているので、基本的には作品同士の統一感はない。それでも山村浩二のアニメ作家としての面白さは堪能できる。

個人的には架空の怪物学者による古文書という体の『怪物学抄』が好みであった。NHKで放送されたらしい『古事記 日向篇』は、「古事記」の中でもとくに有名なエピソードを独特だが日本古来から連なるようにも思えるタッチで再生している。『サティの「パラード」』は、エリック・サティのバレエをシュールに再現しようと試みた作品で、コクトー、ピカソなども登場させて単純に楽しい。

いずれも、観ているとスクリーンに引きずり込まれるような、不思議な心地よさがある(軽いドラッグ的、というと語弊を招きそうだが)。今の日本でアニメとされているものとは別種の、しかし間違いなくある種の本流である山村浩二の世界が堪能できたのは、素直にうれしかった。

 

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