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【邦画】『東京喰種 トーキョーグール』感想レビュー--主人公が「どちらでもある存在」であることに、あんまり意味がない

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監督:萩原健太郎/脚本:楠野一郎/原作:石田スイ
配給:松竹/公開:2017年7月29日/上映時間:119分
出演:窪田正孝、清水富美加、鈴木伸之、桜田ひより、蒼井優、大泉洋

 

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55点
見た目は普通の人間だが、実は人間を食す別の生命体である喰種(グール)。そんな人間をも超えて弱肉強食の頂点となった存在が秘かに生息する東京が舞台。大学生の金木(窪田正孝)は、グールの臓器を移植されたことで、半分人間・半分グールという、どっちつかずの存在となってしまう。

って、これ『寄生獣』じゃん。「圧倒的に人間より強く、かつ人間を食料とする存在」が「人間と同じ姿で街に潜んでいる」という、そのまんま同じ舞台設定。しかも主人公が人間と人間以外の「どちらでもなく、どちらでもある存在」というのも一緒。ついでに、グールの造形も『寄生獣』に似てるし。

まあ、『寄生獣』のパクリとかではなく、こういうジャンルということなんだろう。主人公を「どちらでもある存在」にすることで、単純な二元論ではないと揺さぶって問題提起するのも、定番だし。社会学的見地からすれば、昨今話題のLGBT問題なんかに絡めることもできそうである。まあこれはデリケートな話になってしまいそうだが。

ただこれ、主人公が「どちらでもある存在」であることに、あんまり意味がないんだよね。ビジュアル的には目が片方だけ赤いということで半グールを表現しているが、せいぜい「人間を食べることに躊躇する」くらいしか半人間としての描写がない。しかもこれ、本来なら重大な件なのに、作中ではたいしたテーマにもなっていない。

主人公は、半人間・半グールではなく、元人間・現グールなのだ。中盤以降は、気持ちも行動も完全にグール側だし。「たまたま人間しか食えないだけで、グールだって生きているんだから、無差別に殺さないでくれ!」というメッセージを発するのは、別に主人公じゃなくてもいい。主人公が唯一無二の特殊な存在であることが、全く活きていない。

原作は未読(これから読むつもり)なんだけど、漫画原作にありがちな「長いストーリーを映画の尺に合わせてギュッと凝縮しちゃっているために妙な疾走感が発生している」という点が回避されていたのは、まあ良かったのでは。思い返すとけっこうたくさんのエピソードを消化しているが、うまくコンパクトに収めていて、観ている間はそんなに違和感はなかった。

で、社会的なメッセージ性が希薄というかとってつけているだけな分、アクション・ホラーのほうで頑張ってほしいのだが、これがどうもねえ。CGバリバリなのはいいとして、物理法則の完全無視は頂けない。グールを叩きつけたゴルフクラブがへし曲がるのだが、その方向が逆だったりするので、そもそも物理のこととか何も考えていないのかもしれないが。

あと、白髪のカツラを被った大泉洋が出てきた時点で、完全にコントになってしまっていた。マッドサイエンティストのキャラクター造形として、一番やっちゃいけないヤツでは。大泉洋自体は、いつもの過剰な演技を抑えていた分、ギャップで余計に目立っちゃってたし。

 

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