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【邦画】『忍びの国』--『けものフレンズ』最終回を彷彿とさせるシーンでも興奮できない

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監督:中村義洋/脚本:和田竜/原作:和田竜
配給:東宝/公開:2017年7月1日/上映時間:125分
出演:大野智、石原さとみ、鈴木亮平、知念侑李、マキタスポーツ、伊勢谷友介

 

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53点
大勢の忍者が2手に分かれて争うシーンから、この映画は始まる。ところがこのシーン、妙にだらけている。最初は実戦を模した演習かと思ったが、よく見ていると矢が刺さって死んでいる人もいるので、本当の戦のようだ。緊張感のないまま半端なアクションが羅列され、主人公である無門(大野智)が誰かを刺し殺したところで、もう日暮れだからという理由で戦は終わる。

殺された男の兄である下山平兵衛(鈴木亮平)は憤慨するが、その父(でんでん)は「次男など下人だ」と取り付く島もない。弟の死を労わる者は平兵衛のほかにおらず、殺し合いを暇つぶしとして消費している。緊張感の無さは狙いであり、伊賀の忍者が人でなしの集まりだということを冒頭で示している。

一方、伊賀の国の真横である伊勢に陣地どっている織田信長の次男・信雄(知念侑李)。元の城主である北畠具教の娘・凛(平祐奈)と政略結婚して城に入り込む。さらに、元の家臣(伊勢谷友介、マキタスポーツ)たちに具教を殺させようとし、彼らが躊躇すると、自ら斬り殺す。具教の娘であり、自分の妻の目の前で。

こうして文章で説明するとややこしいが、実際の映画ではスムーズにわかりやすく人間関係を説明している。恨みの矢印があっちこっちに伸びているという状態だ。誰が誰を恨んでいて、それによってどう行動するかによって、伊賀の国vs織田軍の情勢が二転三転していく。一応、「術」によって人心を操っている者たちがいるという設定はあるが、そいつらも前半から制御しきれていないし。

ただこれ、双方の恨みの連鎖で話を転がしているため、善と悪がまったくもって分かれておらず、感情移入しづらい。中盤を超えたあたりに、『けものフレンズ』最終回を彷彿とさせる「森の中から無数の点のような存在が集まる」という本来なら最高潮にアガるべきシーンがあるのだが、その段階でも伊賀の国と織田軍、どちらにも肩入れできていないので、気分は高まらない。どっちもクズだし。

娯楽映画としては問題点ではあろう、時代劇なのに戦シーンで興奮できないのは。だが社会の縮図として捉えれば、そういうものかもしれない。忍者だからって灰色の布をかぶって石に化けるとか、実際の映像で見たらバレバレだったが、「上司の命令に従って絶対に失敗する仕事をして、挙句の果てには死ぬなんて、これもまた社会の縮図なんだ」として強引に説明できるかもしれない。まあ、さすがに笑っちゃったけど。

で、ここで問題なのが、主人公・無門である。やる気がないけど腕は確かで、人でなしの巣くう伊賀の国で飄々と生きている存在。この無門の行動が、特に後半、どうもよくわからなかった。

たしかに金に執着するのは、頭の上がらない嫁・お国(石原さとみ)から「稼いでこい」と叱咤されているからだし、たしかに基本的にお国への想いでのみ動いていたが。何より勝るのは「愛」ってことか。それでも別にいいけど、だったらなぜお国に惹かれるのか、もう少し説得力は欲しかった。

とりあえず、人間にちゃんとした仕事をさせるには「充分な報酬」が不可欠だということはわかった。あと、時代劇にもかかわらずエジソン以後のような人工的な光がやたら目についたのは、なんだったのだろう。

 

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 原作小説

忍びの国 (新潮文庫)

忍びの国 (新潮文庫)

 

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