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【洋画】『ザ・ダンサー』--努力型vs天才型の、理想的な形

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監督:ステファニー・ディ・ジュースト/脚本:ステファニー・ディ・ジュースト、サラ・チボー/原作:ジョヴァンニ・リスタ
配給:コムストック・グループ/公開:2017年6月3日/上映時間:108分
出演:ソーコ、ギャスパー・ウリエル、メラニー・ティエリー、リリー=ローズ・デップ

 

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69点
Bunkamuraル・シネマで観たのだが、3本連続でダンサーの映画が予告で流れていてちょっと驚いた。ル・シネマはそんなによく行く映画館ではないのだが、ダンサーの映画を多く上映するという特徴があるのだろうか。

19世紀末から20世紀初頭にかけて活動した実在のダンサー、ロイ・フラーの半生を描いた作品である。元は農家の娘であり、たくましい体格をしている。顔も男性的だ。長い棒を両手に持って白い布をまとわせてクルクル回るという新しい創作ダンスで一躍時の人となる。文章力が拙くてダンスの魅力が一切伝わらず、申し訳ない。このダンスシーンは、幻想的なダンスそのものと、ロイの心底嬉しそうな笑顔と、肉体的な限界からくる息遣いが、絶妙に掛け合わさっていて素晴らしかった。サーペンタインダンスというもので、リュミエール監督作など最初期の映画でいくつか撮られている。

ロイは、努力と知恵で登っていく人である。舞台設計も自分で行い、照明にもこだわる。パリの有名なホールに立つことができたのは、演技や美貌で評価されたからではなく、マネージャーが舞台装置のデッサンを見たからだ。また、非常に体力を消耗するため、トレーニングを欠かさない。それでも舞台が終わると倒れ、シーツにくるまれて搬送される。

物語の定石として、こういう努力型の主人公の前に現れるのは、若き天才型のライバルである。ということで、ロイを慕ってやってきたイサドラは、生まれ持った美貌と天性の妖艶さで、あっという間に男どもを虜にしていく。そんなスターの原石に配役されたのはジョニー・デップの娘である。得も言われぬ説得力だ。

これいいなと思ったのは、ロイがイサドラを敵対視するのではなく、素直に若い才能の登場に喜び、積極的に彼女を起用しようとするところ。イサドラの無邪気な感覚に忠実に従い、はたから見たらおかしな格好をしてしまうのも、ロイが自分に足りない部分をイサドラから取り込もうとしているようで、なんだか愛おしい。そんなイサドラが後半で取った行動は表面的には酷いのだが、自分によってロイを失墜させてはいけないという、ある種の御礼とも読み取れる。努力型vs天才型の、理想的な形である。

知識がないためパンフレットの解説で知ったのだが、イサドラ・ダンカンという人はモダンダンス界の創始者としてカリスマ的な存在だという。一方のロイ・フラーはイサドラの陰に隠れがちで知名度もイサドラに比べると低いらしい。このあたりの予備知識が鑑賞前に持っていれば、映画がさらに楽しめたのかもしれない。

 

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