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【邦画/アニメ】『君の名は。』--「できないことは、最初からやらない」という潔さ

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監督&脚本&原作:新海誠
配給:東宝/公開:2016年8月26日/上映時間:107分
出演:神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ、市原悦子、成田凌

 

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59点
あけましておめでとうございます。私生活のゴタゴタは片付いていませんが、せめて3が日くらいは嫌なことは忘れたいと思います。というわけで2017年の映画館初めとして、『君の名は。』を観てきました。試験だなんだと言い訳を重ねて去年ずっと鑑賞を避けていましたが、いい加減、この作品から逃げ続けるのも疲れたので。元日の立川シネマシティは満員といっていいくらいの盛況ぶりでした。家族連れが多かった気が。鑑賞後、子供がお父さんに「あれは3年後なんだよ」って解説している様子を複数目撃しました。微笑ましいですね。

さて、何を言ったところで「今さらかよ」としか返されないであろう本作。都心に住む男子校生と飛騨の田舎で暮らす女子高生が3年の時空を超えて入れ替わるという話(どうせみんな知ってるから、あらすじも適当)。入れ替わりの話ということは予告の時点で明かされていることで、時間に3年のズレがある点は中盤で明かされる「観客へのサプライズ」ということになっている。

さて、本作をSFとして捉えるならば、細部に注目せざるを得ない。ところが本作、細部を詰めているとはとても思えない。まず、入れ替わった2人は時間がズレているとは気づいていないのだが、元の自分の世界とは日付はあっているのに曜日が違うことは気にも止めない。週に2回ほど、丸1日が入れ替わるということが何度もあるのに、カレンダーなり新聞雑誌なりで西暦を見る機会が一度もないってあり得るか。飛騨のほうは山奥すぎて文明機器がほとんどないという設定ならいざ知らず、家にTVもあれば高校生ならスマホも普通に持っている、よくある日本の地方だ。3年後の2016年に飛んでいた三葉は、2014年に発売されたiPhone6を見て、何か違和感を覚えたりしなかったか。

別にいちゃもんではない。SFというジャンルは、大きな嘘をつくために、細部にリアリティを構築していくものだから、これは正しい鑑賞法である。画に関してはリアリティあふれる背景を披露しているため、SFとしての甘さが逆に目立ってしまう。たぶん新海誠の作家性でもあると睨んでいるのだが、「できないことは、最初からやらない」ということなのだろう。新海誠、過去作を思い返してみても、細部のリアリティなんて作れる人ではない。

「できないことは、最初からやらない」という潔さは、もっとわかりやすい「話の構成」という点から見て取れる。入れ替わりモノの醍醐味である「突然、別人になってしまったがゆえの右往左往」は、冒頭に少しだけしかない。2人が別の人格に段々と慣れていくくだりは、ダイジェストでサラッと流している。この作品の見所は入れ替わりではないのだ。また、「仲違いしていた父親が、ついに娘の言うことに耳を傾ける」というところから始まる物語上のクライマックスであり、大きなカタルシスを得られるはずのシーンが、丸ごとカットされている。観客という立場からのがっかり感もあるが、それ以上に、話の創り手だったら一番こだわって語りたいであろうところをバッサリいくなんて、という驚きのほうが強かった。まあ、それもこれも「できないことは、最初からやらない」ということなのだろう。

そもそも新海誠はその奇異な経歴から、自分で話を創っているにもかかわらず脚本家としての評価は曖昧なまま、ここまで上り詰めてしまった人だ。今からなんやかんや言うのも酷だろう。潔く「できないことは、最初からやらない」と割り切って、自分のしたいことだけ完璧にすればいいのだ。では新海誠がやりたいこととは何か。それはもう、緻密な作画それだけだ。あとは甘酸っぱい恋愛未満のドキドキがあれば満足してしまう。「画の快楽」をひたすら追求していて、あとは自分の好きなものだけ取り込んで苦手なものは完全に排除するというあたり、宮崎駿の正当な後継者でもある。良くも悪くも。

 

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 小説版

小説 君の名は。 (角川文庫)

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