監督:真利子哲也/脚本:真利子哲也、喜安浩平、
配給:東京テアトル/公開:2016年5月21日/上映時間:108分
出演:柳楽優弥、菅田将暉、小松菜奈、 村上虹郎、でんでん
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62点
閉塞した地方に疲弊しきった若者が、暴力を拠り所に疾走していく・・・
って、こういう話、最近多すぎないか。最近の邦画に出てくる地方は、閉塞しまくりの疲弊しまくりである。一応本作の舞台は愛媛県だが、固有の土地性はほとんど見受けられず、「日本のどこにでもある」という枕詞をつけたくなるような記号化された地方として映し出されている。そしてそんな地方では、他作品と同じように菅田将暉がはしゃいでいるのだ。なんだろうかこのデジャヴは。地方が疲弊しきっているのは現実なのだろうけど、最近そのことばっかり訴えてくるのはなんなんだろう。もうそれは充分にわかったから。あんまり多くて、ちょっと飽きてきたよ。
それでも本作『ディストラクション・ベイビーズ』が他の地方疲弊映画と一線を画しているのは、柳楽優弥がマッドな笑みを浮かべて演じる芦原泰良というキャラクターにある。町をふらつき、目的もなくただ無意味に喧嘩をふっかける泰良は、閉塞した地方の中に囚われもがいている奴らとは違うステージに立っている。泰良の存在は、閉塞した地方から抜け出すための指標として機能している。周囲の人々が、泰良を介することでどうやって閉塞した地方から抜け出せるか、というのが本作の主題だ。
泰良にくっついて自分は女や老人など弱者ばかり襲うことで自己表現をしようとする裕也(菅田将暉)は「閉塞した地方から抜け出したい」という欲求が人一倍大きいが、結局は虎の威を借る狐で終わる。巻き込まれた形である那奈(小松菜奈)は、ある出来事をきっかけに泰良のいるステージに一気に近づく。終始にやついているだけで何を考えているのかわからない泰良が、ある時点以降の那奈にだけは関心を示す。本来なら不気味なシーンのはずなのに、なぜか那奈に救いが訪れているようにも思えてしまい、なんとも不思議だ。
さて、となると気になるのは、物語としてはなんらオチになっていないラストシーン。ネタバレを避けて説明すると、「閉塞した地方」を象徴するあるモノを泰良が破壊するのではと思わせるところで映画は終わる。「閉塞した地方」に囚われているんだったら、どうせ抜け出そうとしたって無理なんだから根本から破壊せよという、強いメッセージかもしれない。ありあまる地方疲弊映画への引導でもある。
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