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【邦画】『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』--野村萬斎は、その存在感だけで、自分のいる場所をフィクショナルな閉じた空間にする力を持っている

 

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監督:金子修介/脚本:古沢良太
配給:東映/公開:2016年4月29日/上映時間:109分
出演:野村萬斎、宮迫博之、安田章大、杉咲花、木村文乃

 

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58点
『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』は、非常に東映感の強い作品であった。その理由のほとんどは、主演の野村萬斎にある。知ってのとおり、ガチガチの古典芸能に身を置く人である。また映像作品においては、『陰陽師』に『のぼうの城』など時代劇が主であり、『スキャナー』以前は「現在」が舞台の作品に出演経験がなかった。過去の出演作の中で、もっとも時代設定が最も新しいものでも、TVドラマ『オリエント急行殺人事件』での昭和8年だ。

独自に発展した様式美を持つ能楽や、現代の価値観からは切り離された時代劇は、閉じられた空間が舞台となるジャンルである。そういったジャンルに慣れ親しんでいる野村萬斎は、その存在感だけで、自分のいる場所をフィクショナルな閉じた空間にする力を持っている。そのため初の現代劇となる『スキャナー』においても、空間を閉じてしまっている。顔の筋肉をこれでもかと動かした仰々しい表情がスクリーンに映るだけで空間はリアルから切り離され、小刻みだがオーバーな演技を披露するたびに、舞台は箱庭のように閉鎖されていく。

この閉鎖した空間が、なんか東映っぽいのだ。宮迫博之をはじめとする共演者も基本的には野村萬斎に合わせた「受け」の演技のため、閉鎖空間の形成を手助けしているし。そして閉鎖的な空間には、話の内容における多少の無理が割と気にならなくなる、というメリットがある。あの漫才コンビは売れるほど面白いのか。道路に自転車だけ置き去りにされていたという行方不明事件を警察が放っておくのか。そんな現実的に考えたら最もな疑問も、フィクショナルな閉鎖空間においては些細なことだ。

ただ、舞台を閉鎖空間にしたならば、「あ、どこか別の世界の話だと思っていたのに、実は僕らのいる現実と繋がっていたんだ!」という瞬間が来てほしいものである。これが無かったのが非常に残念だ。その原因はおそらく、モノに触れて「記憶のカケラを読む」という主人公の特殊能力に、後付けの設定が多かったからだろう。ネタバレを避けるためあやふやな言い回しになるが、例えば「記憶は嘘をつく」のようなミステリのオチとしても観客に訴えかけるテーマとしても重要に関わる設定が、かなり後半になって「実は…」と説明されている。「閉鎖空間が現実とつながっているかも」という見せ場に繋がる直前でそんな醒めるようなことをされては、物語を楽しむこともままならない。ほかはいいけど、この「記憶のカケラを読む」ってところは本作最大のキモなんだから、伏線もちゃんと張ったうえで丁寧に扱って欲しかった。

ところで、安田章大ってジャニーズの人だよね。別にバーター出演でもないのに、こんな役とか引き受けるようになったんだ。そういえば『ばしゃ馬さんとビッグマウス』も主演とはいえジャニーズらしからぬ役柄だったし。よくわからないけれど、まあいい方向性だとは思う。

 

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