ゴジラとガメラ、岐阜にて夢の共演
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岐阜市というのは不思議な場所だ。駅周辺こそ県庁所在地のターミナルとしての風格があるが、少し先に進むとさびれた商店街と住宅地が混在した空間に迷い込む。ちょっと歩いただけの印象論なのだが、住宅地と商業地の混ざり方に、なんか他の地域とは違ういびつなものを感じる。さらに、急にでっかい高島屋のビルがあったり、かと思えばヌード劇場があったり、都市計画という概念を放り出したかのようなカオスな空間が広がっている。ドンキホーテを越えた辺りから、おかしくなってる気がするが。
ヌード劇場「まさご座」
周りは普通の民家が並ぶ
さて、そんなカオスな空間の中に、名画座「ロイヤル劇場」は存在している。場所は、JR岐阜駅から歩いて15分ほど。絵に書いたようなシャッター商店街の中に、いきなりけっこうな存在感で現れる。
断食芸人が座ってそうなシャッター商店街に・・・
突然現れる、楽しそうな入口
上を見上げると、昭和の大スターたちが勢ぞろいしている
昭和スターの似顔絵パネルだけ見ても、これは相当手が込んでいる。どこが運営しているんだろうとネットで検索してみたら、なんと「シネックス マーゴ」と同じところだった。完全なる想像ではあるが、この岐阜土地興業株式会社というところは、シネコン(2つ運営)による利益によって文化事業として単独では利益の上がらない名画座を運営しているのではないだろうか。岐阜県民は、こんなに映画愛のある会社が県内にあることを、もっと誇っていい。
顔はめパネルをじっと見続けていると怖くなってくるの、ボクだけ?
「ロイヤル劇場」が入っているビルの1階には、ガラスの向こうに35mm映写機が展示されている。映写の仕組みを図入りで解説したパネルも一緒だ。富山でも映画館のロビーに(ぞんざいな扱いではあったが)35mm映写機が展示してあった。もう今や、35mm映写機という物は、そういう扱いをされるものだろう。しみじみしたいところだが、実際にはガラスの前で一人で興奮しまくっていた。
うわー!
すげー!!
マジでー!!!
ぎゃーー!!!!
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そんなわけで、入口や1階は、けっこうテンションが上がるのだ。そして、「ロイヤル劇場」のある4階にあがると、また別の意味でテンションが上がる。
いろんな意味で、乗るのに勇気がいるエレベーター
古いエレベーターを4階で降りると、そこはノスタルジーに溢れた異空間であった。ボクは35歳なので、こんな感じの映画館が記憶の片隅にある年齢ではないはずなのに。ノスタルジーという感覚は実際の個人の経験に基づくわけではない、みたいなことを宮台真司が言っていたような気がしたが、ここに来たらそれがハッキリ理解できる。
手前から売店、チラシ置き場、受付カウンター、エレベーターが並ぶ
あまり映画館で食べたくなるという感じではないラインナップ
小部屋に長方形の開口が空いたチケットカウンター。微妙な品揃えの売店。4畳ほどの薄暗い小さなロビー。年季の入った座席。そして上映されるのは石原裕次郎主演『あいつと私』。まるでタイムスリップしたのかと錯覚するかのように、「いつかどこかにあったはずの映画館」が、ここにはある(『テラフォーマーズ』とかのポスターが無ければ完璧なのだが)。繰り返すが、この映画館はシネコン2つを運営している会社によるものだ。絶対、狙ってやってるだろう。照明とか、わざと暗くしてるだろう。
ロビーには、なぜか「普通の映画館の椅子」がある
「ロイヤル劇場」はスクリーンが1つで約300席。1週間ほど、同じ作品を1日4回か5回かけ続けるというスタイルらしい。料金は一律500円で、ふらりと迷い込むにはちょうどいい。
館内
手すりの剥がれ具合に、哀愁を感じる
客は10人くらいだったか。当然というべきか、高齢の方がほとんど。1961年の映画『あいつと私』は、原作:石坂洋次郎、監督:中平康による青春物語。大学生の芦川いづみが、同級生の石原裕次郎の家庭における世間的常識から外れた性事情に、翻弄されつつ惹かれていく話。ちなみに芦川いづみの妹役で吉永小百合も出ている。実を言うと芦川いづみのファンということもあって、この作品は大いに楽しめた。直接的なエロス描写は芦川いづみが土砂降りの雨に濡れながら裕次郎と口づけを交わすところくらいだが、全体を通して性がテーマの作品であり、ノスタルジー的な異空間との相乗効果で興奮しっ放しだった。
ちなみにビルの2階にあるカフェの名前は「コメディアン」
岐阜市におけるカオスな空間の中に忽然と現れるノスタルジックな小さな映画館。旅の途中に、2時間ほどのタイムスリップをしたい時には、最適であろう。
駅までの帰り道、やたらフィリピンパブの客引きに誘われた
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