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【邦画】『星ガ丘ワンダーランド』--ボクらの生きている世界って、これくらいバラバラで不条理なものかもしれないよな

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監督:柳沢翔/脚本:前田こうこ、柳沢翔
配給:ファントム・フィルム/公開:2016年3月5日/上映時間:117分
出演:中村倫也、新井浩文、佐々木希、菅田将暉、市原隼人

 

42点
久々に現れた、超ド級の問題作である。これを観た者は異次元に飛ばされたのではないかと錯覚するほどの、不条理に満ちあふれたとんでもない代物だ。

まず、主人公(中村倫也)は小さな駅の駅員なのだが、性格がシーンごとに違う。どんな落とし物でも大切に預かる心優しき青年かと思いきや、ほかのシーンでは無造作に落とし物を捨てたりしている。一応、主人公の心変わりを示すようなエピソードが挿入される場合もあるのだが、それにしたって変化しすぎである。多重人格者なのか。子供の頃のトラウマ、とかで説明できるレベルではない。

また、本作は細かい挿話がいくつもある(はっきり言って多すぎる)のだが、それぞれの話がまったく繋がっていないばかりか、ほったらかしになってるものも多い。例えば主人公は、あるきっかけによってゴミ回収の男(市原隼人)と心を通わせる間柄になるのだが、再び会うシーンでは主人公がいきなりキレて喧嘩腰になり、そのまま絶縁状態になる。で、この件は終わり。あと、駅に展示してあった町の模型を壊す少年2人。これに関しては、前後に何もないので、もう意味がわからない。それから注目すべきは、ビニール傘の女ね。言動が脈絡なさすぎて、サイコ極まりない。ぜひ実際に本作を観て、同じ恐怖を味わってほしい。マジで怖いから。本当なんなんだ、あの女。

ちなみに今あげた話はどれも、メインストーリーとは基本的に関係ないからね。どれも、丸々削除したって特に本筋には影響ない。

昨今の日本映画では、脚本がおかしい作品というのは無数にあるが、大抵は「何をしたかったか」というのは判断できるものである。いろんな理由があって、意図したことができずに話が繋がらなくなったりした失敗作というのは多い。だが本作の場合、そもそも「何をしたかったか」すら予測がつかない。バラバラのエピソードがバラバラのままぶちまけられているだけ。なんちゅう不条理。

まあそれでも、軸となる話はあることはある。主人公の母親(木村佳乃)が休園中の遊園地で死亡しているのが発見され、観覧車の上から飛び降り自殺した(観覧車をよじ登ったってこと?)と警察は判断するのだが、その死の真相は何なのかというミステリー部分で一応は物語を引っ張っている。これがまた説明不足すぎて理解しづらいので、どういう話なのかは省略するけど。とりあえず、主人公にとって思い出のある山の上の観覧車が再び動くシーンがクライマックスに配置され、それをみんなが目撃することで全ての話が繋がったみたいにしているわけである。いや『マグノリア』のカエルじゃないんだし無理ありすぎるけど。特に繋げなくてもいいタップダンスおじさんをここで再登場させるのはどういう意図なんだ。

そして最後の最後に明かされる母親の死の真相は、「日本の鑑識なめんなよ」っていう感じのバカバカしいものなので、やっぱり話を繋ぐことなんかできない。そのため最後までバラバラのまま映画は終わり、観客は不条理な虚構世界から不条理な現実へと放り出される。

でも、ボクらの生きている世界って、これくらいバラバラで不条理なものかもしれないよな。そう考えたら、すごく哲学的な深い作品じゃないかと思えてきた。たぶん錯覚だけどさ。

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