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【小説】最近読んだ小説レビュー--清水杜氏彦、彩坂美月、浦賀和宏

最近、電車の中で読んだ小説レビューです。ここのところハズレなしで、どれもオススメです。まあ、ハズレっぽいのは途中で読むのをやめてるからだけど。

 

清水杜氏彦『うそつき、うそつき』
※ 第5回アガサ・クリスティー 

嘘をつくとランプの光る首輪をすべての国民が装着しなければなくなった日本を舞台に、非合法の首輪除去を生業とする少年を主人公とするディストピアSF小説。あまりに細かすぎるディテールの作り込みが、こんな荒唐無稽な設定にリアリティを与えている。嘘が嘘であると通用しない架空の世界の中で、人はなぜ嘘をつくのか、そもそも嘘とはなんなのか、改めて問いかけてくる。 

うそつき、うそつき

うそつき、うそつき

 

 

彩坂美月『僕らの世界が終わる頃』

中学を登校拒否している少年が投稿したネット小説のとおりに、町で事件が起こる。現代の感覚を帯びつつも、テーマ的には古典である、大人になるための一歩目を描いている。過去を受け入れ未来を見据えたとき、そして恩恵を受ける側から授ける側へ回ったとき、それは成長のための通過儀礼となる。多少ストーリー展開が気になるところがあり、特に警察の対応に疑問がないわけではないが、少年少女へ向けた青春ミステリの佳作として上々の作品。

僕らの世界が終わる頃

僕らの世界が終わる頃

 

 

浦賀和宏『ふたりの果て ハーフウェイ・ハウスの殺人』

事故にあったあと姿を消した妹を探すライターと、外界から隔離された学園で起こった殺人事件の話が、交互に展開されていく。登場人物の名前が一致するのは偶然なのかどうか、時系列やらなんやらを推理しながら読んでしまうミステリ脳の人ほど騙されるのではないかという、予想外の大オチがつく。その話の繋げ方は思いつかなかった。もちろん、それぞれの話を単独で捉えてもちゃんとしたミステリであり、グイグイ引き込まれる。

ふたりの果て/ハーフウェイ・ハウスの殺人
 

 

 

Vaboo