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【邦画/アニメ】『ガールズ&パンツァー 劇場版』--アニメーションの力って、こういうことなんだよな

アニメ 映画 邦画

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これはマジの話なのだが、ボクは『ガールズ&パンツァー』のTVアニメシリーズを見たとき、そんなにハマらなかった。いや本当だって。『ガールズ&パンツァー』とは、ものすごく簡単に言うと女の子が戦車に乗って戦う話なのだが、これは学校の「部活」という設定で、戦闘はあくまで「試合」なのである。だから実弾をバンバン撃っても誰も死ぬことはない。本作の上映前にアニメについての簡単な説明映像が流れるのだが、そこでも「戦車は特殊なカーボンでできているので安全」みたいなことを言っている。試合の最中にハッチから半身を出してるけど、でも安全なのだ。戦車の話なのに死の臭いが一切しない設定を受け入れられるほど、今の世界は平和ではないのではないか。とか言うと良い子ぶってるみたいが、「戦争の道具なんだから死がつきものだろ」という邪悪な思考回路からくる拒否反応かもしれない。人が死ぬ戦争映画は大好きだもん。

で、劇場版を観た感想だけど、これが予想をはるかに超えて最高だった。ただしこれは「戦争の道具には死がつきもの」という概念を一旦捨てて、部活の試合なんだという設定を飲み込んだうえで感じることのできる「最高」である。

映画はまずゴルフ場で行われている試合の、主人公の相手チームが劣勢に立たされているところから始まる。このいきなりの場面展開は悪くない。そこから大洗の街を縦横無尽に戦車が走り回り、観光名所や商店街を走り回りぶっ壊し回りながら試合が続き、最終的には大洗が誇る水族館「アクアワールド大洗」で決着がつき、割れた水槽の隙間からペンギンが逃げ出す。もうとにかく試合シーンのアングルから何から画の見せ方がことごとく「映画」なのだ。戦車そのもののかっこよさはもとより、状況に応じた臨機応変な作戦はひとつひとつがドラマチックであり、各キャラクターの個性は台詞ではなく行動によって説明されるし、大洗の観光紹介としても充分に機能している。なんなんだこれは。これからアクション大作映画を造る人たちは全員観たほうがいい。それくらい映画としてちゃんとしている。

この最初の試合だけで随分と時間をかけているが、さらに後半には主人公にとって負けられない試合が行われる。この劇場版、真ん中に平場のシーンはあり、そこもまた「萌え」を含めて悪くない(ただし、ストーリー上で疑問がないわけではない)のだが、上映時間の7割くらいは試合つまり戦車アクションシーンだ。後半の試合は特に実現不可能であろう動きを戦車が行うが、アニメ的リアリティによってチャラになり、しかし戦車そのものの造形はリアルなために純粋にかっこよく見える。ジェットコースターのレールの上を戦車が激走するとかさ。おそらく時間と人手と技術(つまりひっくるめて、金)を膨大にかければ、フルCGで同じ描写は可能だろうが、そうすると「どうやって撮影したんだろう」とか「あの端っこのところ、ちょっとおかしくない?」とか余計なことが頭に浮かんでしまう。でもこれはアニメなので、余計なことは気にせず没頭できる。アニメーションの力って、こういうことなんだよな。また、登場キャラクターが膨大なアニメなのだが、そのうち20名以上にはきちんと見せ場を設けているのも心憎い。そして試合が終わったところで余計な後日談はつけずにすぐエンドロール。素晴らしい。物語が終わったあとにダラダラどうでもいいことを続ける最近の邦画は見習って欲しい。

なお、TVシリーズは一切知らなくてもついていけるようにきちんと配慮されている。戦争アクション映画が好きな人、アクション映画が好きな人、映画が好きな人、そして『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が好きな人は絶対に観て損はない。