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【漫画】先月読んだ漫画新刊レビュー 青年誌編--『僕たちがやりました』『先生の白い嘘』『もぐささん』

『僕たちがやりました』2巻
原作・金城宗幸 作画・荒木光/「ヤングマガジン」連載/2015.10.6 発行

「そこそこ」の人生を願って無難に生きようとする男子高校生が、友達がボコられた仕返しのため、というよりなんか面白そうだからというその場のノリで、隣の不良高校にプラスチック爆弾を仕掛け、死者10名の爆発事件を起こしてしまう。主人公に与えられる選択肢には「そこそこ」へたどり着けるものはひとつもなく、またそのことを察知できる知性もない。「そこそこ」になりたいなら絶対に縁を切ったほうがいい先輩からの、プーケットへの高飛びの誘いなんていう人生最悪コースにも、本人は熟考したつもりだろうがこちらからすれば浅はかすぎる判断で乗ろうとする。「そこそこ」なんて夢のまた夢である底辺の世界にいることに気づくこともできない主人公の絶望は、さすがの「ヤンマガ」クオリティである。

 


『先生の白い嘘』4巻
作・鳥飼茜/「月刊モーニング・ツー」連載/2015.10.23 発行

男と女は平等ではない。それは誰でも気づいているが、性が絡んだ場合は圧倒的に強いのは男のほうであるという当たり前の事実を利用している者がのし上がっている。4巻までは「女の武器」はロクに役立たず、女であることに頼りすぎた者は敗北を味わう。唯一、妊娠を武器に形勢逆転を狙う女が、巻き返しを図りそうであるが。この、男優位の力関係が崩れた時、本作最大のカタルシスが訪れるのであろう。いくら社会が男女平等だと騒いだところで、社会の外側ではどうにもならない男女差が歴然と存在していることを看過した問題作。

 


『もぐささん』7巻
作・大竹利朋/「週刊ヤングジャンプ」連載/2015.10.24 発行

食マンガ繚乱の戦国時代において奮闘する作品のひとつ。おとなしそうな女子高生が実は相当な大食いであり、そのことに気づかれると恥ずかしくなって顔が赤くなるというところに萌えを見出すのが初期からのコンセプト。同時に、いかに食い意地が周囲にバレないようにしつつ大食いを行うかという、作中でいうところの「ステルス食い」のアイデアで話を持たせる。この「ステルス食い」が完全に現実には不可能なものばかりなのが、最大の弱点。居合抜きの要領でふところから串団子を取り出し、目の前の教師にバレずに0.1秒で口に入れる、とかさ。現実不可能な時点で面白みがなくなっている。前巻あたりから新キャラクターを次から次に出してきているが、このテコ入れもうまくいっていない。現状かなり迷走しており、並みいる同ジャンルの強者たちに対して、一足出遅れてしまっている。

 

 

 

僕たちがやりました(2) (ヤングマガジンコミックス)