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【漫画】ヒロユキ『アホガール』--「萌え」は適量を超えたとき、ただウザいだけになる

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ヒロユキ『アホガール』(講談社)4巻 13p

 

 

連載中の漫画に対して、好きだからこそ、「もう安楽死させてくれ」と思う作品がある。ボクにとって、「週刊少年マガジン」連載中の4コマ漫画『生徒会役員共』(氏家ト全)が、そうである。同じネタを繰り返し、同じ絵を使いまわしている状態は、「萌え漫画」という目線においては嫌いじゃなかったぶん、読んでいてツラい。実は数年前に、そろそろ終わらせるんじゃないかと思うような急展開を立て続けにしていた。イケメンの男子学生が美少女に囲まれた学園生活を送るが周りの好意に気づいていないという典型的なハーレムものなのだが、ある一時期、女生徒から半裸で抱きつかれたりガラス越しにキスしたりと、これまでにない一線の越え方をしていた。いくら4コマ漫画だろうと後に尾を引く強烈なエピソードだろう。最終回へ向けての準備作業のようであった。時期をほぼ同じくして、「マガジン」に新連載だったり読み切りだったり他誌からの出張だったりと、軽いシモネタを含んだ萌え系ギャグ漫画が多く載るようになった。『生徒会役員共』にとどめを刺す刺客が集まってきたかのようであった。

 

その後、アニメ2期もあったりして、一時期の急展開が無かったかのような安定感(でも、ツラさはそのまま)を取り戻した『生徒会役員共』は、現在も連載中だ。そして、刺客のであったはずの『アホガール』(ヒロユキ)も、仲良く一緒に連載中だ。

 

『アホガール』のヒロイン、花畑よしこは、幼馴染のことが好きで、いつも元気でテンションが高く、パンチラはしょっちゅうで、頭は悪い。オーソドックスな「萌え」の要素を備えているが、どれもが過剰である。本作を読んでいて気づくのは、「萌え」は適量を超えたとき、ただウザいだけになるという事実。こう自分からがんがんパンツを見せられても、嬉しくもなんともない。頭の悪さは「萌え」に重要な要素だが、それが《ワンと鳴くのはネコだっけ・・・?》というレベルでは、関わりたくもなくなるだろう。

 

主人公でありよしこにアプローチされ続けているあっくんも、「萌え」漫画の男主人公の基本であるクールガイだが、やっぱり過剰にクールすぎて、ただの嫌な奴である。読者目線を担う「普通の人」がひとりいるが、ほかはどの登場人物にも感情移入できなければ、「萌え」も感じられない。

 

「萌え」要素の量を過剰に増やすことで、逆に「萌え」とはかけ離れたものにしてしまうのは、なんだか批評的である。この漫画があまり面白くないことですら批評的だ。

 

 

 

アホガール(1)

アホガール(1)