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【邦画】『TOKYO TRIBE』感想レビュー--園子温の片手間仕事?

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東日本大震災をきっかけにしておかしくなったり化けの皮が剥がれたりした著名人ってのはたくさんいた。園子温もその一人だと個人的には思っている。『冷たい熱帯魚』(単純にエンタテイメントとして傑作)に至るまでの輝かしい実績は、あの日を境に途絶えてしまった。『ヒミズ』において、被災地のシーンをあとから追加することで作品全体を台無しにしたのも束の間、『希望の国』などという140文字で伝わる程度のメッセージを2時間以上かけてくどくど訴える愚行は、かつて『愛のむきだし』で4時間かけても抑えられない情熱をほとばしらせたあの監督はもういないんだという失望を感じるに充分であった。

前作『地獄でなぜ悪い』は、震災前の園子温が帰ってきてくれそうな期待を込めて、あえて絶賛した。誰しもが気づく欠点は多々あれど、全ては嘘っぱちだったとあざ笑うかのような例のラストシーンからは、「物語の力」を信じる園子温の目が再び光ろうとしているのを、たしかに感じ取った。

さて、ドラマ『みんなエスパーだよ!』(面白かったけど、園子温が監督じゃない回のほうが良かった)をはさんで、園子温の最新監督作『TOKYO TRIBE』である。震災前の園子温は戻ってきたのか、若干の不安を感じつつ鑑賞したわけだが…

架空の国を舞台に、シブヤとかブクロといった街にそれぞれ族(トライブ)が縄張りを張っていて、諍いを起こしている。最初は現実の渋谷や池袋や歌舞伎町や高円寺といった街のイメージを、ある種の擬人化のようにトライブに反映させているのかと思ったが、そういうわけじゃないらしい。なんで新宿のトップが鎧兜姿で戦車に乗っているのか。いや、シネフィル向けのサービスカットであろうことはわかるよ。でもそれ新宿関係ないじゃん。往々にしてこんなかんじだから、誰がどのトライブに所属しているのかも、どうでもよくなってくる。

まあ、アクションシーンはさすがで、清野菜名という人を初めて知ったが、かなりの逸材である。みんなでずっと戦ってくれと思うくらい。で、この映画の最大の問題は、中身がないんである。ほんと清々しいくらいに。たとえば清野菜名演じる、ブクロの風俗に沈められそうになる少女が、実はウォンコン(たぶん、香港のこと)を支配する大司祭の孫娘だったという件。その後、一切のフォローなし。こんな感じで起承転結の「起」だけが大量にばらまかれるだけ。それをごまかすためなのかいくつもの表層で覆っている。表層ってのは、アクションだったりラップだったり、そういったものです。

表層にこだわるのも一概に悪いとはいえない。ファッショナブルってことだし。しかし中身がないヤツのファッションがダサいのは世の摂理で、この映画もアクション以外の表層部分は、往々にしてダサい。具体的には、竹内力が白目を剥くとか、窪塚洋介がエキセントリックなこと言いながらはしゃぎ回るとか、そういうダサさ。ダサいだけならまだしも、もう飽きるくらい何度も見たよ。

ここまですっからかんの映画は、園子温のフィルモグラフィーからしてもかなり異例だ。『地獄でなぜ悪い』の次作であると系統だてて捉えるとどうにもしっくりこないが、単に片手間仕事だっただけかもしれない。なんか忙しそうだし。

あと、「最近の日本映画、染谷将太に頼りすぎ」問題ってのもあるけど、それはまた別の機会に。

TOKYO TRIBE

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