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【小説】白河三兎『総理大臣暗殺クラブ』--親子というのは、あらゆる社会システムの中でも最も強固で変化を求めるのも困難な代物である

表向きは、とある高校で数名が所属するだけの小さな部活動「政治部」。しかしその実態は、総理大臣の暗殺を企てる秘密組織だ! という高校が舞台なのに中二病みたいな設定。なのだが、総理大臣を暗殺したい理由はイデオロギーでもなんでもなく「乙女の恋心」だったりするのだが。でもやっぱり中二病要素は強く、株で大儲けしたため何でも調達できる「ボンボン」とか、盗聴・盗撮は朝飯前で情報収集と機械イジリの能力が超人離れしている「ムセン」とか、どこかで見たような形骸化したチート設定が引っかかる。

 

体育祭やら生徒会長選挙といった学校行事を舞台として、政治部のメンバーたちが知恵と鍛錬された技術と莫大な資金によって裏側で行う活劇は、なかなかスリリングで読んでいて楽しいし、単なる勧善懲悪にならないようにした各章の結末にも好感が持てる。政治部の「被害者」となってしまった人々がかわいそうに思えたりするのだが、それは著者の計算のうちだろう。

 

しかし、読後が単なる爽快感に落ち着いてしまうのは、彼女たちが社会の枠組みの外側まで飛び出すことができなかったからではなかろうか。先に挙げた「ボンボン」も「ムセン」も含め、彼女たちが派手な活劇を起こしたあとに行き着くのは、きわめて個人的な親子の問題だ。親子というのは、あらゆる社会システムの中でも最も強固で変化を求めるのも困難な代物である。親子関係に何かしらの変化を行うためには、いったん社会の外側に出るしかないのだが。本作は、「虚構としての青春」の、本当の醍醐味まで到達できていない。とても惜しい。

 

 

総理大臣暗殺クラブ (単行本)

総理大臣暗殺クラブ (単行本)