井田ヒロト『お前はまだグンマを知らない』(新潮社)2巻 63p
ある都道府県出身者にしか通じない風習や料理などといったものをネタにした企画は、昔からある。TV、雑誌、ネットと媒体問わず、定番企画のひとつになっている。
もう何年も前に、血液型性格診断を「科学的な根拠がないから」とバラエティ番組で面白おかしくネタにしないよう通達されたことがあったが、どうもその代わりに県民ネタをこぞって扱うようになったと思うのだが。たかが赤血球の外側で区分したに過ぎないABO式血液型よりは、県民性ってなんとなく根拠ありそうだし。『秘密のケンミンSHOW』も安定感もって現在も放送中だ。
『ケンミンSHOW』が表だとしたら、裏の都道府県ネタを得意としているのが『月曜から夜ふかし』である。ちょっとした話題を小馬鹿にした目線で取り上げるのが売りの番組だが、ここでも都道府県ネタは鉄板だ。小馬鹿にするのに最適な対象は、地味だったりマイナスイメージのあるところ。というわけで、主に標的にされているのが埼玉、島根、そして群馬である。
そもそも『月曜から夜ふかし』はネットで小さく話題(大きな話題を選ばないところが巧妙なのだが)になっていることを後追いしていることが多い。群馬ネタはネットで隆盛を極めており、秘境だの未開の地だの日本語が通じないだの言われている。ネットの中では“小馬鹿にしやすい”群馬が特別扱いされているのは事実だ。そういえば「ぐんまのやぼう」っていうアプリゲームもあった。
前置きが長くなったが、漫画『お前はまだグンマを知らない』は、そんな群馬ネタだけで突っ走る。絵も話も飛び抜けてすごいわけでもなく、とにかく群馬ネタを随所にぶっ込むだけ。最初のネタが「電車のドアはボタンを押さないと開かない」ってそれ群馬だけじゃなくて全国に結構あるだろというヤツだったのだが、そのあとは焼きまんじゅう、水沢うどんに始まる名産に、草津温泉や富岡製糸場といった観光地に、さらには群馬県民以外も知らない地方CMまで、とにかく群馬群馬群馬である。『坂本ですが?』『ニーチェ先生』と同じ「出オチ系」だが、早々とネタの枯渇を感じさせるそれらの作品と違い、ネタが尽きる感じが全くしない。群馬に限らず、都道府県ネタなんて、いくらでも絞り出せるだろう。まあ、2巻では栃木県との抗争という展開にすることで、約半分は栃木ネタだったが。このまま周辺の県を巻き込んでいけば、ネタの枯渇は、しばらく起きそうにない。
果てしなく延々と続く出オチ。そんなパラドックスが、この漫画を少し奇妙にしており、少し魅力でもある。
お前はまだグンマを知らない 1 (BUNCH COMICS)
- 作者: 井田ヒロト
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/03/08
- メディア: コミック
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