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【洋画】『スパイダーマン:ホームカミング』--「自分がスパイダーマンだ」という承認欲求が、ピーターには希薄である

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監督:ジョン・ワッツ/原作:スタン・リー、スティーブ・ディッコ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/公開:2017年8月11日/上映時間:133分
出演:トム・ホランド、マイケル・キートン、ジョン・ファヴロー、ロバート・ダウニー・Jr

 

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73点
例によってアメコミに詳しくなく、旧作も記憶に残っていないため、まっさらな気持ちで観た。というわけで旧作との違いとかはよくわかりません。マーベルを全く知らない人でも理解できるような配慮には感服する。それでも『スター・ウォーズ』だけは誰でも知っている前提だったが。アメリカ人にとって『スター・ウォーズ』は、日本で言う桃太郎レベルの誰でも知っている話なんだろうか。

自転車泥棒などの小さなトラブルを防ぐご近所ヒーロー、スパイダーマン。正体は15歳の高校生・ピーターだが、友人にも家族にも打ち明けていない。アイアンマン(トニー・スターク)に勧誘されてアベンジャーズとともに戦ったこともあるものの、その後は召集の連絡は音沙汰なしである。

男子高校生のみならず世代・人種を超えて誰もが持つであろう承認欲求。食欲、性欲、睡眠欲が人間の三大欲とされているが、この牙城を崩しかねないであろう承認欲求。ピーターは、「スパイダーマンは自分だ」ということをアピールしようとはしないが、スパイダーマンがアベンジャーズの一員として大活躍して注目されたいという承認欲求は常に抱えている。

ここがひとつポイントである。覆面系のヒーローが必ず持つ「活躍しても誰も自分とは思ってくれていない」という自我が、ピーターには希薄だ。承認されたいと願うのはあくまでスパイダーマンであり、ピーターという個人は彼自身の中では既に死んでいる。学力においては憧れのリズ先輩を含めて誰もが一目置いているのだが、そこに悦に入ることすらしない。

スパイダーマン=ピーターという点での承認欲求アピールは、偶然正体を知ってしまった親友・ネッドに託されるわけだが、それにしてもピーターの自分自身に対する自信の無さはなんなのか。というか、スパイダーマンとピーターを本人ですら同一視できないのが、これまでのヒーローモノのテンプレからすると不思議だ。

男子高校生の成長譚に帰結するために、最後はスパイダーマンとピーターの中間の存在となったうえで、敵役と対峙する。そして、スパイダーマンの活躍によってピーターにとっての悲劇が訪れるという展開を受け入れることが、成長につながる。いずれも、スパイダーマン=ピーターの同一視を促している。

今回は字幕で観たので、吹替ではどれだけ再現しているのかわからないが、この映画は声がけっこう重要な要素なので、音響の良い映画館で観ることをオススメします。あと、公開初日の満員のバルト9で観たせいか、ギャグがちゃんと笑いを取っていた。

最後に引っかかることをひとつ。どう考えてもこの話のヒロインは、ピーターが思いを寄せるリズではなく、あの人だと思うのだが。撮り方からして。次作への壮大な前フリなんだろうけど、これでは放ったらかし感がある。1本の映画の枠内で何かしらの着地点を作っておいたほうが良かったのでは。最近のシリーズモノに対して、この手の苦言が多いけど。

 

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