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【邦画】『海辺の生と死』--満島ひかりが体全体で表現する「世界に対する小さな抵抗」

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監督&脚本:越川道夫/原作:島尾ミホ、島尾敏雄
配給:フルモテルモ=スターサンズ/公開:2017年7月29日/上映時間:155分
出演:、満島ひかり、永山絢斗、井之脇海、川瀬陽太、津嘉山正種

 

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67点
時は太平洋戦争末期の昭和19年。奄美の小さな島(加計呂麻島)に、海軍特攻隊が駐屯してくる。子供たちが通学路に使っている山道を一方的に封鎖する朔中尉(永山絢斗)に無言で戸惑う、小学校教師のトエ(満島ひかり イラストが似てなくてすみません)。そんな印象の悪い出会いから少しづつ2人は惹かれあっていき、戦争中の切ないロマンスが始まる。

原作は、『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』でおなじみの漫画家・しまおまほの祖父母である島尾敏雄と島尾ミホ(こういう紹介でいいんだろうか…)。2人の自伝的小説をミックスしているという、一風変わった構成。ノンフィクション作家で島尾夫妻についての著書もある梯久美子が脚本監修をしている。

笑うところもバトルアクションもない文芸作品だが、2時間半をまったく飽きずに観ることができるのは、自身も先祖が奄美大島であるという満島ひかりの神秘性に寄るところが大きい。別に人知を超えた存在という役どころではないが、物静かだが鋭い眼光、島独特のイントネーション、茶色く日焼けした細い体など、満島ひかりの全てが、余所者である朔中尉(ひいては観客)からは特別な何かを感じる。

時代背景が執拗に2人の運命を弄ぶものの、戦争は「個人では抗えない強大な世界そのもの」として抽象的に描かれる。『この世界の片隅に』と同じテアトル新宿で観たのも、そう感じた一因かもしれないが。ともかく、満島ひかりは最後の最後に、それまで動きとしては抑えていた肉体性を開放し、死に向かう想い人への情熱と、蟷螂の鎌ながらも世界に立ち向かおうとする姿勢を、体全体をフルに活用して表現する(こういう文章表現から、満島ひかりが具体的に何を披露したかは解りますね)。

あれから60年以上経ち、またしても戦争が日常の一部となりつつ現在、このような作品がこのような時期に映画館でかかっていることは、ひとまず正しいし、ありがたいことであろう。

 

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