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ヤガンEX

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【TV】2.28『R-1グランプリ 2017』--出場芸人の全ネタ 短文レビューしました

TV

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お笑いの基本的な型は何かと言えば、「ボケとツッコミ」である。もちろん例外も多いが、漫才にせよコントにせよ、「ボケとツッコミ」という基本形がまず存在する。では、ピン芸人の場合はこれがどうなるか。一番多いのは、ピン芸人が「ボケ」となり、観客が「ツッコミ」の役割を与えられるという形だろう。観客が口に出して「なんでやねん」ということは無いが、心の中でツッコミを入れながら笑うのがピン芸人の正しい鑑賞法ではないか。

そういう意味で、たとえば平野ノラのネタ。当初からそうなのだが、「クロマティ」とか「高橋名人」とかいった人たちを「バブルの象徴」として名前を出してくるので、「その人はバブルと関係ないじゃん」と心の中でツッコミを入れてしまう。この時に発生する「ボケとツッコミ」の構図が面白くて笑ってしまうのだ。この際、平野ノラが「その人はバブルと関係ないじゃん」という「ツッコミ」を想定しているかは、最終的な笑いの発生とは無関係だ。実際、平野ノラがどれだけ自覚して「クロマティ」と言っているのか未だにわからないし。

つけ加えれば、「ボケ」の役割となるピン芸人の場合、ネタの完成度もあまり問題にならないということだ。完成度が著しく低かったとしても、観客が「完成度、低!」と正しく「ツッコミ」を入れてしまえば、ネタは成立するのだから。完成度の低いピン芸人がブレイクしやすい理由も、この辺にあると思う。まあ、そんなことを考えながら、今年の『R-1グランプリ』を見ていた。以下、ネタを披露したピン芸人についての雑感を登場順に書いてみます。

 

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・レイザーラモンRG

トップバッターを任された中堅として、順位は捨てて場を温めることに徹していた。トランプ大統領に扮して「オール・シズオカ・ピープル・ウィル・ビー・テロリスト」とか言うって、けっこう危険な風刺でもあるが。あえて完成度を低くして観客に「ツッコミ」を入れされるのも手慣れたもの。


・横沢夏子

日常にいる人をリアルに表現する「演技型」で、柳原可奈子の系譜。ピン芸人の場合、「素のキャラクター」(ネタ以外のトーク番組などで見せる本人のキャラクター、という意味)をネタ中にどれだけ取り込むかも重要である。この人の場合、トーク番組出演時などでの「素のキャラクター」のほうをネタに寄せているような。


・三浦マイルド

意外にも「素のキャラクター」をネタから一切排除していた。前の優勝時が「素のキャラクター」を前面に押し出したものだったので、排除することで成長の証としたかったのかもしれない。ネタはフリップによる「言葉遊び型」だが、観客が「ツッコミ」を入れる隙がないため爆笑は取りにくい。


・サンシャイン池崎(敗者復活3位 決勝進出)

ネタの完成度が低いほど観客が「ツッコミ」を入れやすい、という説を立証しているような人。ネタ2本を見て感心したのだが、「素のキャラクター」がどれだけ世間に認知されているかを把握したうえで上手に匙加減を取っている。改めてちゃんと見ていると、ネタのぶっ飛び具合がこちらの想像をはるかに超えていて、才能を感じる。完成度が低いのも計算ずくだな、たぶん。

ところで1本目のネタ、番組中に敗者復活が決まり急きょ披露した割には、冒頭のカメラワークが打ち合わせしたみたいに綺麗であった。まあ、技術職のスタッフは誰が敗者復活してどんなネタをするか事前に知らされていたのかもしれないが。


・ゆりやんレトリィバァ

間を持たせるために「毒舌・偏見型」を随所に挟んでいるが、基本はCMで若い女優がやるような動き、セリフと同じことをするという「パフォーマンス型」。特定の人にだけ許された行為をこういうビジュアルの人がやったらどうなるかという実験は、批評的でもある。「お前がやるな」という「ツッコミ」も倫理的に難しい昨今では、とりあえず笑っとけという意味での笑いを促してくる。


・石出奈々子(決勝進出)

設定がガチガチに固まったキャラクターをまず用意して、様々なシチュエーションに置く「キャラクター固定型」。これってキャラクターを一度決めてしまえば、シチュエーションさえ変えればいろんなパターンができる。それにしても日本国民におけるジブリの共通認識ってすごいな。


・ルシファー吉岡

ここで初めて登場した「ツッコミ型」である。存在しない相手を「ボケ」と想定し、芸人は「ツッコミ」となるパターン。これだとネタ内で「ボケ」と「ツッコミ」が両方存在するため、観客は「ツッコミ」役とならずに鑑賞することができる。教師(「ツッコミ」)と生徒(「ボケ」)というネタだったため、「ツッコミ」が「ボケ」に気を遣うというあたりが新しかったか。


・紺野ぶるま(敗者復活2位)

「毒舌・偏見型」の王道パターン。「帰国子女は背中が汚い」みたいなのに対し、「それ、偏見だろ」という決まった「ツッコミ」を観客に求める。ところで、存在しない相手と対峙するネタの場合、「相手の言ったことをそのまま繰り返す」というリアルには存在しない状態がどうしても発生してしまう。この辺をどう回避するのかもピン芸の見どころだが、この人の場合は「変わった中国人(たぶん)に扮する」という、強めのキャラクターを演じることで違和感を消していた。あと、同じことを2回繰り返す、というのも。


・ブルゾンちえみ

ネタが飛んで、結果発表時に泣いてしまったことが話題に。飛んだのは、おそらく「35億」のところだと思われる。ここ、ネタフリでもあったので、初見の人には意味が解らなかったところが多々あったかも。「キャラクター固定型」6割、「パフォーマンス型」4割といったところか。


マツモトクラブ

「演技型」と思いきや、どれか一つに分類するなら「キャラクター固定型」のほうがしっくりくる。ただシチュエーションのオリジナリティが圧倒的なのだ。今回は、ネタの中身に現実味が無かったため、この人の持ち味が半減された感がある。

ちなみにこの人、ネタと「素のキャラクター」との使い分けがいまだにはっきりしていないので、今回の出場者の中ではもっともトーク番組が心配な人でもある。まあ、無理にそこを目指さなくてもいいんだけど。


・アキラ100%(優勝)

今回唯一の「特殊技能型」である。日々の努力によって培われた、凡人にはできない特殊な芸を披露するパターン。これって芸のクオリティが高ければ高いほど笑いよりも「すげぇ」という感心が勝ってしまうというジレンマがある。いっこく堂を見て誰も笑わないように。「特殊技能型」で笑いを取るには、披露する芸自体にバカバカしさがなくてはいけない。というわけでアキラ100%、完璧。

それにしても、42歳という年齢を聞いて、人生っていろいろあるんだなあと思った次第。


・おいでやす小田(敗者復活1位)

「ツッコミ型」なのだが、相手の言葉を繰り返すことをなるべくしないなど、細部にかけて完成度が高い。ネタの完成度だけなら、今回ダントツだったかも。ツッコミなのだが対峙している架空のボケが規格外なために次第に壊れていく様子も良かったし。本当はこういうネタが評価されてしかるべきなんだろうけどねえ。まあ、仕方ない。

 


最後に総評。今回、場が荒れていないようで実は荒れていたのでは、と思う。というのも、番組が始まる前から「アキラ100%は大丈夫か」という空気があったから。この空気をきちんと察知していれば、例えば紺野ぶるまなんかはいつものドギツい下ネタをやっても良かったのかもしれない。

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去年のR-1グランプリ覇者

これ、見たけどけっこう笑った。個人的に好きなのは「砂漠の太陽の真似」

 

 

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過去のTVレビュー

yagan.hatenablog.com